お天道さまばっかり追いかけるなよ。
前回のコラムで紹介した「流転の海シリーズ/宮本輝(全9巻)」ですが、やっと読み終えました。
というか実は、三十年も読み連ねてきた思い入れの深い小説だっただけに、読み終えるのが惜しくて、最後の最後、しばらく放置してみたり、「流転の海 読本」なる攻略本的なるものをいったん挟んだりして、往生際の悪いことをしていましたので余計に時間が掛かってしまいました。
ネタばれになるので内容については詳しくは書きませんが、やはり最後は涙なしでは読めませんでした。
著者である宮本輝の父がモデルの小説で、登場する主人公の一人息子はその宮本輝自身。前回も紹介したように主人公の熊吾が語るたくさんの名言があるのですが、最終巻の最後に、息子の言ったいくつかの言葉の中で、また心に残ったモノがありました。それがこれです。(ちなみに熊吾は愛媛出身なので伊予弁です)
「わしは若い頃からお天道さまばかり追っかけてきて失敗した。お天道さまは動いちょるんじゃ。ここにいま日が当たっちょるけん、ここに坐ろうと思うたら、坐った途端にもうそこは影になっちょる。慌ててお天道さまの光を追って、いまおったところから動いて、日の光のところへとやっと辿り着いたら、またすぐそこは影になった。そんなことばっかり繰り返してきたんじゃ。じっと待っちょったら、お天道さまは戻ってくる。お前は、ここと居場所を決めたら、雨が降ろうが氷が降ろうが、動くな。春夏秋冬はあっても、お天道さまは必ずまたお前を照らす。」
主人公の熊吾は、基本的にはずっと自動車に関わる仕事をしてきたのですが、才覚がきくために、儲かりそうな様々な事業に次々に手を出していきます。
もちろん、時代にマッチした独創的な事業ばかりを手掛けてきたのですが、結局はどの事業も信頼していた側近に裏切られて失敗してしまいます。
それを自分自身が悔やみ、息子に同じような失敗をするなと言い聞かせたのでしょう。
つまり、自分の信じるぶれないものをしっかりもつこと。
今は目の前のことを全力でやろう。いまいる場所で、ってことなのでしょう。
パートナー探しもきっと同じ。見つかるか見つからないかは、縁とタイミング次第。
焦らずじっくりと腰を据えて活動していきましょう‼