なにがどうなろうと、たいしたことはありゃあせん。

ホーム代表コラムスタッフブログ

なにがどうなろうと、たいしたことはありゃあせん。

カテゴリー:

いま、ある小説を再読しています。全9巻ある長編小説です。

その小説は1984年に連載が開始されてから終了まで、36年もの歳月を経てようやく完結しました。

私がその小説を読み始めたのは20代前半の若かりし頃。

その頃はまだ第二部が出た頃だったので、それからいつも待ち遠しい思いをしながら(もしかして完結する日がこないかも)と杞憂しながらずっと完結を待ちわびていた小説です。

「坂の上の雲/司馬遼太郎」、「豊饒の海/三島由紀夫」と並んで、生涯読んだ数多くの小説の中で、ベストスリーに入るお気に入りの小説です。

タイトルは「流転の海」。著者である宮本輝の父親をモデルとした、宮本輝のライフワークともいえる長編連作であり、まさに人生という流転の海の荒波を力強く生きた父へのオマージュ的作品です。

再読しているのは、もちろんこの素晴らしい小説をもう一度味わいという想いからですが、あまりに長い時間を掛けて出版されたが故に、数多く現れる登場人物がさっぱり分からなくなってしまったから、というのが本当の理由です。

まだ半分ほどしか読み終えていませんが、やはり深遠な素晴らしい作品で、学生時代の頃のように寝食忘れて貪り読んでいます。

また、まだ小説半ばながら、もう既に読み終える寂しさを感じながら読んでいます。

主人公「松坂熊吾」は1947年、50歳にして初めての子供「伸仁」を授かり、息子が二十歳になるまで生き抜くことを誓います。

闇市での自動車部品会社再興に始まり、大阪、愛媛、富山などで様々な事業に乗り出すのですが、周りの人間の裏切りもあって、なかなかうまくいかない、という感じで話は進んでいきます。

この本を読んでいると、育ってきた環境が人生に大きな影響を与え、自分の歩んできた通りに未来は作られていくということが分かります。

そして、人との繋がりがいかに大事かが分かります。

小説の中には、熊吾が語るたくさんの名言がありますが、自分的に一番響いた言葉はこれです。

「なにがどうなろうと、たいしたことはありゃあせん。」

自分が大切にしていることさえ守って、お天道様に顔向け出来ることさえやっていれば、なにがどうなろうが万事大丈夫ってことなんでしょう!

写真は、宮本輝、満一歳の誕生日に撮影したもの。「流転の海シリーズ」は登場人物なんと1500名。シリーズ全体で240万部売り上げた。